2013年12月19日木曜日
柔術家のためのブックレビュー『性と柔 女子柔道史から問う』
「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社)のベストセラーで日本の柔道・柔術の歴史が改めて注目されていますが、歴史的資料として是非読んで欲しい一冊があります。それはバルセロナ五輪柔道銀メダリストで現・スポーツ社会学者の溝口紀子さんが11月初めに発表した『性と柔 女子柔道史から問う』(河出ブックス)です。
第一部「<第一部 柔道史から社会を見つめる>」では柔道がまだ“柔術”と呼ばれていた時代の正史・秘史を日本だけではなく海外の文献からしっかりレビュー。柔術から、“柔道”という言葉に変容していった経緯についてしっかり検証しています。簡単ですが高専柔道、“木村”の話にも触れ、また一つ違った視点から歴史を補完できるのは非常に面白いと言えます。
「<第二部 女性と柔道>」から文字通り女子柔道の話になり、あの女子柔道強化選手15名による暴力・ハラスメント告発、全柔連の助成金不正受給、全柔連理事のわいせつ事件まで、相次いだ不祥事に元女性代表選手の著者ならではで鋭く切り込んでいます。
日本の柔術・柔道の歴史を改めて学びながら、女子選手の問題についても一度考えるためにも、御一読をお薦めします。次号のゴング格闘技でも溝口さんの対談記事が掲載されるとのこと。注目です。
『性と柔 女子柔道史から問う』
単行本 B6 ● 232ページ
発売日:2013.11.12
定価1,470円
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309624648/